ミラサカクジラの短歌箱

歌人・ミラサカクジラの短歌や雑多な日記。

1日目 リネンに囲まれて

入院1日目

 

伸びていく爪はシーツをひっかいてまるで幼児が嫌々(やや)するように

 

伸びていく影は月明かりに反って指先までも真似をしてくる

 

清潔な白いリネンに囲まれていきがくるしい、もう、ねえ、ほら、さあ

 

車椅子するすると往く春風がきっと外では今吹いている

 

病棟は沈黙だけを愛してて教会のように今日も優しい

 

 

入院1日目。やけにたくさんの検査をした。心電図、レントゲン、血液検査、そんなものじゃこの痛みは見えないのに何故。そうして思った、身体は均衡がとれているのだ。それだけで感謝しなきゃいけない、本当は。でもまだできない。繊細なわけじゃない、原始的なだけ。タナトスとの葛藤。生きにくい、息もしにくい。生きる方へ、生きる方へ、歩いていくための歩行訓練。それが今日から始まった。