亡霊動物園
熱帯夜、そう呟いて気が付いた ぼくは熱帯なんかしらない
深夜二時亡霊動物園ひらくエンドロールのそのまた後ろ
ウサギ小屋にはやわらかな毛皮落ちていて明日にはきっとコートに変わる
虎たちは虎であることやめていて優しい舌で互いをなめる
モノクロの世界にいるのにインスタに良く乗せられて疲れたパンダ
「猛禽類なんて名前はもう嫌だ」おおきな秩序の片隅に住む
さようなら、白熊の顔をした人形 さようなら、コカ・コーラの空き瓶
レストラン売っているのはポークカレー無人のがらんどうで少し泣く
ぼくたちは生まれたからには縄張りをつくって誰かを追い出すのかな
ニンゲンの檻にはだれもまだいないぼくは入っていいのだろうか
動物園はすきだ。動物が好きだから。だからこそ少し苦手でもある。窮屈な自然は、まるで不自然だから。檻のなかで一生を過ごすのは、どんな気持ちだろう。可愛い、とか、怖い、とか、言われ続けながら。わたしならきっとかなしい。でも檻から見続けていたら、人間の方が檻に入っているように感じるかもしれない。それは決して間違いではないのだろう、と思う。