ミラサカクジラの短歌箱

歌人・ミラサカクジラの短歌や雑多な日記。

夏を待つ

洋楽をきいている午後青空の色のネイルを探しています

 

蝉はまだ鳴かないけれどマルボロのメンソを吸えばもう近い夏

 

恋人とドンキホーテで買う花火テンプレートが今日は愛しい

 

「スイカって太陽よりも赤いよね」「きっと太陽に憧れたんだよ」

 

光化学スモッグ注意報がなる  園児らの歌う声高らかに

ディズニーランド短歌

 

朝イチの宇宙旅行は急旋回さよなら昨日泣いてたわたし(スペースマウンテン)

 

宇宙にもわるいひとっているらしい わるいってなぜわるいんだろう(スターツアーズ)

 

飛びだした音楽たちには色がある(灰色の空ばかり見ていた)(フィルハーマジック)

 

蜂蜜で満たされた彼のなかでみる極彩色であたたかい夢(プーさんのハニーハント)

 

世界って実は単純だったみたい ケンカした子にLINEを送る(イッツアスモールワールド)

 

余らせた身体で空を飛んでいるその時傷はひかりにかわる(ダンボ)

 

生命たち貪りながら寄り添っておなじ夕日に背を向けている(ジャングルクルーズ)

 

おひめさまたちが光に踊ってて昔のわたしがそこにいたんだ(エレクトリカルパレード)

 

<こんにちは/さよなら>ばかり繰り返す回転木馬で愛を伝えて(キャッスルカルーセル)

 

「友達で入って恋人で出てくる」そんな魔法がめくばせをする(ワールドバザール)

他人のまま

変わりたいサナギが蝶になるようにわたしの皮膚をいま食い破る

 

愛情をずさんに床においたままあなたと夜にとけゆく土曜

 

気付いたら遠くでまりつきする僕がこっちを見てる強い黒目で

 

摩天楼きらきらひかる新宿で迷子になった  僕ら子供だ

 

舌と舌くすぐりあってもどこまでも僕ら他人のままだと知って

「ウツボカズラは家に飾ろう」

明後日の天気予報は雨だけど今は皐月の風を愛して

 

軽装のあなたと歩く植物園「ウツボカズラは家に飾ろう」

 

笑うなら笑っておくれ一昨日の初恋めいたあやまちなんて

 

歩くことそれは案外難しいリボンがずれて止まった学生

 

平成のヒットチャートを聴いている汗をうかせたうなじは青く

しあわせを形にしたら

朝ごはんを一汁三菜つくってはあなたを優しく起こしてみたい

 

テレビはさ不幸ばかりを流すから消しておこうかこの朝くらい

 

しあわせを形にしたら黄色くてちょっと甘すぎる卵焼きです

 

白黒を迷わなくていい日々にいてあなたとオセロをたのしんでいる

 

救えない夜を何度も越えたから「おはよう」ひとつでわらえるんです

 

 

お題「朝ごはん」

空想のかばん

見え透いた嘘に相槌うちながらテトリスのように積もりゆく澱

 

夜に見る夢に終わりがあるように輪廻にもいつか終わりが来るの

 

飲み干したりんごジュースを捨てたなら街へ出ようよ僕と一緒に

 

愛されて/愛してを日々くりかえしすっかり白目は濁ってしまった

 

空想のかばんに「すき」をつめこんで遠くの街へ今夜行きます

からっぽの水曜日

からっぽの水曜日には聴いてない音楽流して痛みを愛す

 

思い出す激流下りのような日々まるで他人のような顔して

 

泣いている灰色の空  駅前は笑い声だけ反響してて

 

夢くらい空を飛びたいそれなのに地べたを這いずり汚れた両手

 

名前すら知らない星に祈ってるなんでもいいの、縋れるならば