たべもの短歌
挨拶のかわりに渡したきびだんご 彼女の旦那は柴犬の顔
「秘密だよ、林檎飴を処女が食べるとその晩夢でポルカをおどる」
フエラムネすうすうとなる先月に喧嘩した子にLINEを送る
夜祭りで一等賞のわらいがお「ねえ花火ってウニみたいじゃん?」
観覧車乗らずに帰るわたしたちペペロンチーノは大盛りだよね
今何時おやつの時間ポンコツな木馬にまたがり答えるおまえ
鯨カツほおばりながら居酒屋は水底ふかく傾いていく
誘蛾灯まつげのさきに受けながらストロング・ゼロわるいこの笑み
ふあふあのカステラに四肢を投げ出して氷河期来るまでねむっていたい
わたしはたべるのがはやい。すきなものはぺろりと平らげてしまう。あっという間に、なくなってしまう。すきな食べ物が、わたしの一部になる。血肉になる。一時期、メロンパンにはまって数ヶ月にわたって毎日メロンパンをたべていた。あのころのわたしは、メロンパンだ。
食べものをあつかった作品は多い。一番すきなのは、江國香織の「つめたいよるに」に収録された「子供たちの晩餐」。親の留守中に、禁止された食べ物をはっちゃけて好き勝手にたべるはなし。やっぱり、健康もだいじだけど、すきなものを食べるのは幸せだ。今日は久しぶりにメロンパンにかじりつこうかな。はらぺこあおむしみたいに、むしゃり、ってしてやろう。