ミラサカクジラの短歌箱

歌人・ミラサカクジラの短歌や雑多な日記。

平成アンカー

平成はたのしかったと言いたくてアンカーだから急かされている

 

インスタに虹色ばかり載せるけど鈍色の空をたまに撮ります

 

特売のハンドスピナーくるくると素知らぬ顔で時間をまわす

 

充電が切れるとうそをついたから世界でひとり珈琲をのむ

 

ハッシュタグつけられないけどすきなもの 無言の電話のくすくす笑い

 

遠くまで旅行に行こう遠くってわたしにとっては知らない漁港

 

人影を百八つ踏む渋谷駅待ってなくてもゆるされるかな

 

尊大な羞恥心バスを降りれない終点がどこかわからないまま

 

さようなら学生最後の夏だからかもめになって飛んでゆきます

 

来年もなにもかわらずイヌノフグリは咲き乱れるよ、咲き乱れるよ

 

 

平成が終わる。なにかの終わりを、私たちはしらない。ノストラダムスの予言の頃は、まだ幼かったし。わたしたちは、はじめての終わりに戸惑っている。去年より、たのしくしたい。来年より、はじけていたい。そんな、浮ついた気持ち。

だけど本当は、なにも終わらない。うちの犬も、近所のカラスも、なにもしらない。なにも、変わらない日々が待っている。
それでもなにか、特別を期待してしまうのは、どうしてだろう。