ミラサカクジラの短歌箱

歌人・ミラサカクジラの短歌や雑多な日記。

短歌の水深 宇宙からマカロンまで

わたしは昔から言葉がすきだった。ひとりで辞書を読むのがすきで、小学一年生から小説を書いていた。
ぼんやりと、自分は小説家をめざすのだろうと思っていた。高校生の時、授業で短歌に出会うまでは。

はじめて短歌を宿題に出されて、わたしは悩んだ。たった31文字で何を書こうか。31文字で、何が書けるのか。どこまで大きなものを、描けるのか。ふと心の海に映ったのは、夜空だった。宇宙、そうだ、宇宙を31文字に詰めてしまおう。それはほとんど実験だった。

遠い月に地球の影が伸びてゆく宇宙の中に今立っている

わたしは実験が成功したことに満足した。すると先生が「歌会始に出してみたらどうか」と提案して下さった。歌会始。なんだかものすごい話だ。結果、宮内庁から電話がかかってきた。佳作だった。何万もの歌から、わたしの歌がすくい上げられた。それは宇宙から星がひとつ見つけられるのと同じくらい奇跡なんじゃないか。

わたしはペンネームを新しくした。ミラサカクジラ。くじら座のミラ、を並び替えてもじったものだ。ミラは変光星だという。色の変わる、珍しい星だ。わたしも色んな作品を光らせたい。

今日、わたしは「第32回全国短歌フォーラムin塩尻」優秀賞を受賞した。

カロンは一日一個と決まってるキスは何回しても良いけど

身近なマカロン。でもマカロンは、特別なお菓子だと思う。ちょっと着飾って、香水をふったデートの朝みたいな。ちょっと早く待ち合わせ場所に行って、鼻歌をうたいながら待っていたいような。そんな、やわらかな、きよらかな、特別さ。
宇宙からマカロンまで、31文字は紡いでいく。わたしはこれからも、31文字と向き合っていく。あたらしい光を、いつかまた届けられますように。