ミラサカクジラの短歌箱

歌人・ミラサカクジラの短歌や雑多な日記。

レムの森

青空は幾億も飛ぶモルフォチョウぞんぞん揺れる、太陽はない

 

モノクロの花ばかり咲く庭にいて自分の瞳の色を忘れた

 

文字盤はあちらこちらを指していてモルモットたち行進をする

 

ヤドカリのヤドの中には最新の薄型テレビが光を放つ

 

水たまり映る景色の向こうがわ違う宇宙につながっている

 

ガゼルたち大空を飛ぶライオンなんてもうこわくない

 

コンビニで売っているのは愛情と桜でんぶと壊れてる傘

 

たい焼きが遡行する川 粒あんの卵を産んでみな死んでゆく

 

自販機は乳飲み子たちを売っている今日も誰かがSuicaで買った

 

二年前死んだあなたが笑ってる金木犀がやさしくゆれた

 

 

夢を見ているとき、夢は現実とあまり相違ない。追いかけられたら逃げるし、優しい花畑では笑みがこぼれる。
人生の何分の一かは、夢のなかで私たちはすごす。たのしい夢、かなしい夢、それでもぱちりと目を覚ますと、ほとんど忘れてしまう。

でも、思うのだ。わたしの人生は、長い夢なんじゃないか。ふといつか目が覚めて、ふわふわの雲の上で、大きく伸びをするんじゃないか。そのとき、「長いけど楽しい夢だったな」なんて言えたらいいな。