パラレル
猫達がいっせいに鳴く満月はそれをいつでも許してあげる
紫の空にはさやさや流れ星ねがいは一つも叶わないのに
公園のベンチは語る「人間はペンキが剥げたら死ぬなんて!」
捨てられたチェリーコーラの吸い殻が蜘蛛に代わって歩き始める
ドブ川に無数の金魚が泳いでく街々をゆく血管のよう
空からは昔の涙が降ってくるすっかり錆びたわたしの自転車
幼子が鳴らすカスタネットにあわせ老若男女はステップを踏む
ペンギンが我が物顔で空をゆく一番星へまっすぐにゆく
とんとんと卵を割れば中からは幼いわたしの歪な笑顔
夕方のチャイムはいつもと変わらないヨイコハオウチニカエリマショウネ
きっと世界には穴がある。たとえば廃屋の隅に、死者の口のなかに、ガードレールの向こう側に。わたしたちは、穴に気付かないまま、スタバの新作を飲みながら歩いたりしている。
世界に果てはあるのだろうか。最果てがあるとしたら、それはどんな景色なんだろう。色は生きているのか、言葉は意味を成すのか。そんなことを考えながら、今日も満員電車に揺られている。