ミラサカクジラの短歌箱

歌人・ミラサカクジラの短歌や雑多な日記。

真冬、真夜中、真っ白な

街々の導火線ならここにある瞬きをする駅前広場

 

さよならと初めましてを繰り返す回転木馬は夜を知らない

 

冷めきったココアに満ちるかなしみをひと匙掬ってきみに飲ませる

 

吐く息が白いねなんて笑うけど身体のなかは赤でいっぱい

 

長電話の果てにはなんにもないけれど寝息をきいて朝を待ってる

 

呟いたOKGoogle.頼むからホワイト・クリスマスにキスさせて

 

こごえてる鳩や雀をただ想う きっと夜明けは綺麗だろうな

 

「寒いね」とツイートすれば「寒いね」とリプが返ってくる暖かさ

 

やわらかいおとぎ話をききながら眠った頃は寒くなかった

 

濃紺の緞帳おりる真夜中に 林檎の皮がうまくむけない

 

 

冬はあたたかい。さみしさが喉まで満ちるから、優しくなれる。優しい言葉がでてくる。こごえながら公園で飲む缶のココアは、特別な味がする。
わたしは冬が苦手だ。だって寒くてあったかくて、とっても目まぐるしいから。だけどそれが、冬の持つやさしさかもしれない。厳しくて、やさしい。それでもやっぱり、春を待っている。